私が40代になってから始めた趣味の一つが『ボクシング』です。もうすでに始めてから半年が経過し、週2-3回ペースでサボらずにジムに通い続けています。
「40代のおじさんがボクシング!?ボクシングみたいな格闘技って、ブレイキングダウンが好きな若い子がやるもんでしょ?」って思われるかもしれませんが、実はボクシングやキックボクシングを趣味にしているミドル世代って実は多いんです。
私の通っているジムなんて、70代のシニア世代もいるくらい。平日の午前中にジムへ行くと、40代の私は若造扱いされます笑
ただ20代・30代の頃と比べると、運動能力が衰えておりボクシングスキルを身に付くのが遅くなっているのが現実。こんなことならもっと若い内からやっておけば良かったと感じることもしばしばです。
しかし今日がこれからの人生で一番若い日なのは間違いありません。それに少しずつではありますが、ボクシングが上達していると感じています。
あんなにカッコ悪かったワンツーのコンビネーションが、我ながら見れるレベルに達したなと思いますし、トレーナーさんからもお世辞も入っているかもしれませんが「すごく上達しましたね!」と褒めてもらえる機会も増えてきました。もう初心者のフェーズは卒業できたと言って良いでしょう。
そんな40代でボクシングを始めたおじさんが初心者レベルを卒業できたのは、トレーナーさんの指導と自分なりの試行錯誤があったからです。
それにおじさんだからと言って悪いことばかりではありません。若い人よりも運動能力が衰え、反射神経が鈍ってきたおじさんがだからこそ、上達するために何が大切かを気付きやすいです。
そこで今回の記事ではこれまでのボクシング経験で学んだ、初心者を卒業するために重要だと感じたポイントを『オフェンス』『ディフェンス』『マススパーリング※』の3つに分けてお伝えします。
※マススパーリング(マスボクシングやマスとも呼ぶ)とはパンチを当てずに行う実戦形式の練習のことです。私が通っているジムは安全性を考慮して相手を殴るスパーリング練習は行わないので、取り組むのはマススパーリングまでです。
いずれのポイントもボクシングを始めたばかりの自分が知りたかった内容なので、ボクシングを始めたばかりで効率的に上達させたい初心者さんにはきっと参考になるはずです。
オフェンス時に注意する9つのポイント
1.パンチで当てるのは人差し指と中指の付け根部分
ジャブ・ストレート・フック・アッパー、全てのパンチで拳のどの部分を相手に当てるからは共通しています。
それは中指と人差し指の付け根部分です。
その箇所は拳を握った時に最も硬くなる部分であり、パンチを撃った時に相手に強い力が伝わります。あとは指根元の部分は骨が太くケガをしにくいもの大きな理由です。
初心者の時期は付け根部分ではなく、指が部分やグーを握った時に最も前に出る第二関節を当てがちですが、そのやり方ではパンチの威力が弱くケガの原因にもなるので注意しましょう。
なお人差し指と中指の付け根をパンチで当てるポイントは、インパクトの際にほんの少しだけ手首を内側に曲げることです。
ただいきなりからその感覚を掴むのは難しいので、サンドバッグにゆっくりパンチをして当て勘を掴みましょう。
2.ジャブを打つ時に前手を下げない
ジャブを打つ際はガードポジションなどの構えた状態から、そのまま相手のアゴ付近を目掛けて最短距離かつノーモーションで撃つのが理想。
しかしどうしてもジャブを撃つ瞬間に前手(左手)が下がってしまい、いかにも「今からジャブを撃つぞ!」という初動でパンチをしている人が多いです(私もこれを何度も注意されています笑)。
その撃ち方では相手にジャブが来るのがバレるのでガードや避けられる可能性が高くなる上に、腕を下げることで隙も生まれるので顔面にパンチを貰いやすくなるため危険です。
そしてこれはジャブだけじゃなくストレートやフックでも同じです。パンチを撃つ際に腕を下げる癖がある人は、鏡の前でのシャドーボクシングを繰り返してその癖を直しましょう。
3.ジャブは腕をしっかり伸ばす
ボクシングの攻撃の基本はワンツー(ジャブ→ストレート)のコンビネーションです。ワンにあたるジャブは攻撃だけでなく、自分が有利な距離をキープし相手に近づかせないためにも有効です。
特に身長が高くリーチ(腕の長さ)があって、インファイト(接近戦)ではなくアウトボクシング(相手との距離を取って戦うタイプ)を得意とする方ならジャブで牽制して相手との距離を取ることが大切。
そのためにはジャブを撃つ際は、肩を入れてしっかりと腕を伸ばして相手との間合いを確保しましょう。
次の動画は現WBAスーパー・WBC世界ライトフライ級統一王者の寺地拳四朗選手のジャブ解説動画ですが、しっかりと肘を伸ばした位置でパンチがヒットしているのがわかります。
※2分24秒からサンドバック打ちでのジャブのポイント解説
私の周りを見ているとボクシングを始めて数カ月以上が経って慣れてきた方ほど、ジャブが雑になり肘を曲げた状態でサンドバッグやミット撃ちをやっている方が多いです。
自然とワンツーが打ててミット撃ちも気持ち良くなってきた脱初心者の時期の方ほど、パンチが雑になり陥りやすい罠なので注意しましょう。
世界チャンプでもしっかりを伸ばして撃っているのに、初心者さんが雑に撃っちゃダメですよ。
4.ジャブを撃つ時に飛び上がらない(特に後ろ足)
基本的にジャブはスピードと威力を上げるために、後ろ脚で地面を蹴って押し出して前足で踏み込むようにして撃ちます。
相手を牽制するだけなら腕と肩だけで撃つのも一つの方法ですが、相手との間合いを詰めながら攻撃する、あるいは威力のあるパンチを撃つ際には足の力を利用するのは効果的です。
ただこの際、後ろ脚の蹴りだしを意識するあまり、跳びびながらジャブを撃ってしまう方が少なくないです。私も跳びはねながらジャブをする癖があるのでトレーナーさんによく指摘されます。
ジャンプしてる最中は隙だらけで上に、ぴょんぴょん跳ねながらのパンチはカッコ悪くて見栄えもよくありません。
そのため脚力を利用してジャブを撃つ時は、飛び上がらずにほぼすり足の状態でパンチを撃つようにしましょう。
5.構える時は前手を顎に近づけ過ぎない(相手との距離があるとき)
相手との距離がある場合(離れている場合)、ストレートやジャブなどのまっすぐ伸ばすパンチしか届かないので、前手である左手はアゴにぴったり付けてガードする必要ありません。
不用意に近づかせて攻撃を受けないために、牽制する目的で前手を自分の顔から少し離した状態(前手を相手に近づける)で構えと取るようにしましょう。
目安としては『アゴ』と『左手の拳』との間にバレーボールが入るぐらい。
なお距離が近づいた場合には、フック系のパンチも届くのでガードを固めるという意味で左手をアゴやこめかみ付近を置くのは有効です。
常に同じ場所に前手を配置するのではなく、相手との距離がロング・ミドル・ショートのいずれかなのかを判断して手の位置を変えましょう。
- ロングレンジ…相手との距離を保つために前手を顔から離して配置
- ミドルレンジ…どんなパンチも届くのでガードを固める
- ショートレンジ…相手よりも頭の位置を低くして密着
ただしスパーリング禁止のボクシングジムでは、ショートレンジでの攻防は危険なので基本的には行いません。その場合は、ロングとミドルレンジでの攻防だけを意識しておけば大丈夫です。
6.ボディジャブは当てた後に拳をグッと押す
ボディジャブを相手に効かせるためには、触れるような弱いパンチではダメ。
アゴやこめかみへの攻撃は脳の揺れに直接つながるので、触れるような攻撃でも効きやすいですが、ボディの場合はそれではダメージを与えられません。
触るジャブではなく、ボディに触れた後に拳を”グッ”と押し込むパンチを意識してください。イメージでとしてボディを突き抜く感覚で撃ちます。
ちなみに井上尚弥選手は試合でボディジャブを多様しますが、彼も足を踏み込みしっかりと相手をお腹を打ち抜いています。
ボディジャブがイマイチ苦手という方にわかりやすいのが、次の解説動画です。アングルを変えて何度もポイントを伝えくれるので、とても参考になります。
※ボディジャブ解説の詳細は2分付近から
なおこの意識はジャブだけじゃなく、ボディフックやボディストレートでも有効です。ボディへのパンチは”グッ”と押し込み、突き抜くイメージで打ち抜きましょう。
7.ストレートは伸ばした時に肩と背中で腕を支える
パンチを撃った時は、必ず同じ力が自分の側にも働きます。これを『作用・反作用の法則』と言います。理系の方なら高校物理で習ったアレです。
そしてボクシングしていて最も作用・反作用の法則を実感するのが勢いのあるストレートを撃った時です。
打ち終わりの体制がおかしいとバランスを崩して、ふらついてしまいます。それを防ぐために、ストレートで肘を伸ばしたインパクトの瞬間は、肩と背中で腕を固定して支えるイメージでパンチを撃ちましょう。
インパクトの瞬間に上半身にグッと力を入れて、腕を固定するようなイメージです。そうすることで、ふらつきを防止するだけでなく、相手に力が伝わる効かせるパンチも撃てます。
8.左フックを打つ時に膝を伸ばさない
ワンツー左フックのコンビネーションを撃つ際、最後の左フックのモーションで膝が伸びて上半身が起き上がってしまう人は割と多いです。
膝を曲げた状態でパンチを撃つのは太ももやお尻の筋力が必要なため、ラクしようと自然と膝が伸びてしまうんですよね。私もその癖があり、コンビネーションのスピードを意識するとつい膝が伸びてしまいます。
相手と距離が近づいた状態で膝が伸びて上半身が起き上がると、急所であるアゴやこめかみを撃たれやすくなり危険です。
隙を作らず攻撃を終えるためにも、ワンツーフックのコンビネーションの際には最後の左フックまで膝を伸ばさないで打ち終わりましょう。
9.フックはしっかりと体を捻りタメを作ってから撃つ
左フックのような体を捻るフック系のパンチを、ジャブやストレートなどに織り交ぜてコンビネーションとして活用することは多いです。
例えば『ワンツーフック』や『ワンツーフックストレート』など。そのフックを撃つ際に注意するべきポイントが、体を捻ってしっかりとタメを作って撃つこと。
コンビネーションのスピードだけを意識すると、タメを作れず手打ちとなり全く効かないへなちょこパンチとなります。見た目もカッコ悪くジャッジの印象もよくありません。
スピードを意識するのも大切ですが、初心者の頃はそれよりも基本に忠実なパンチの打ち方を心がけるのが重要。フックの基本は体を捻ってタメを作るです。
ディフェンスで気をつける6つのポイント
1.ジャブの打ち終わりに前手を戻す
ボクシングで最も相手の攻撃を受けやすいタイミングの一つがパンチの打ち終わりです。
特に多いのがジャブを打ち終わった後に、前手をガードの位置に戻さず胸の前付近の中途半端な位置にあるケース。
これでは相手にアゴやテンプル(こめかみ)を撃ってくださいと言ってるようなもんです。
毎回ジャブの後に腕の位置をキープして、ガードポジションに戻すのは肩や腕がダルくて疲れるのはよくわかりますが、相手からクリティカルヒットを受けないためには重要です。
ジャブを撃ったら元の位置に腕を戻す、基本的なことですが忘れずに常に意識しましょう。もちろんジャブだけじゃなく、ストレートやフック、アッパーでも同じです。
2.ダッキングは膝を曲げて腰を落とす
『ダッキング』とは頭を前後に下げ、文字通り”アヒル(ダック)”のような動作でパンチをかわすディフェンス技術です。
パッと見の動作の印象から、ダッキングを上体と頭だけを動かすとディフェンス方法と思われている方が多いですが、それは大きな間違いです。
ダッキングは上体を前後に曲げるだけでなく、膝を曲げて腰を落とすことが重要。そうすることで上半身の体勢の変化が最低限となり、次の攻撃へと繋げやすくなります
膝を曲げるディフェンスは太ももとお尻の筋肉を使うため、ボクシングの練習以外にもスクワットなどの筋トレで鍛えておきましょう。
3.ダッキングは相手がパンチを撃ってきた側へよける
初心者がディフェンスで悩むことの1つが「ダッキングでパンチをかわす時、右と左にどちらに避けるべきか?」です。
ダッキングでは基本的に相手の撃ってきたパンチの方へ、頭を移動させてかわします。
相手が左手を撃ってきたら右側へダッキング、右手で撃ってきたら左側へダッキング。これが基本です。
相手がパンチを撃つ方へ頭を移動させる慣れるまでは恐怖心が出てしまいますが、逆方向へ避けてしまうと反対の手から来る次の攻撃をもろに喰らうのでそちらに避ける方が危険です。
かくいう私もこれが苦手で、逆の方向にダッキングしてしまうことがよくあります笑
トレーナーさん曰く「原因はパンチが怖いという恐怖心。パンチに慣れるように何度もマススパー※で練習するしかない」とのことでした。反復練習あるのみですね。
※マススパーとはマススパーリングの略(ジムによってはマス、マスボクシングとも呼ぶ)。パンチを当てないように行う実践形式の練習。
4.ダッキングは前後に体重移動をさせる
ダッキングでパンチを避ける際は、膝を曲げて腰を落とすだけでは不十分です。上体を移動させるために、避ける方向の膝の上にしっかりと体重を乗せましょう。
ダッキングでの体重移動の方法は次の動画の解説がとても丁寧でわかりやすいです。
※ダッキングでの体重移動の解説は51秒付近から
左へよける時は左ひざ、右へよける時は右ひざの上へ体重移動が基本です。体重移動しない肩だけ動かすダッキングではパンチを避けられないので意味がありません。
5.攻撃終わりはダッキングかウェービングをする
ジャブにしろストレートにしろ、パンチの撃ち終わりは隙ができやすいため相手の攻撃を受けやすくなります。
そのため攻撃を終えたら、ダッキングやウェービング※あるいはスウェーバックなどのディフェンスを入れるようにしましょう。攻撃→防御→攻撃→防御→…、この繰り返しがボクシングの攻防の基本です。
※ウェービングとは頭をアルファベットの『U』の字に振って、攻撃をかわすディフェンス技術です。
ただし、いきなり実戦でやろうとしても難しいので、シャドーボクシングやサンドバッグの練習の時から、撃ったら守るを取り入れましょう。
6.バックステップは上体をキープしたまま腰を中心に下がる
バックステップとは後ろに下がって相手と距離を取り、パンチをよけるディフェンス技術です。
この時、上体をのけ反らせて後ろに下がってしまうと※、カウンターでの攻撃につなげにくい上にコンビニネーションで連続攻撃をされたら対処が難しいです。
※上半身をのけ反らせて相手の攻撃をかわす『スウェーバック(略称スウェー)』という技術もありますが、それは応用的な中級者向けスキルなので初心者はまずはバックステップでのディフェンスから身に付けましょう。
バックステップでパンチを避ける際には、次の攻撃につなげられるように上体をキープしたまま腰を中心に後ろ足→前足の順ですり足気味のステップで下がりましょう。
なお高くジャンプして後ろに下がるのは、隙ができやすい上に見栄えも悪いのでNGです。
マススパーリング(試合形式)で注意する3つのポイント
1.相手との距離に合わせてパンチを打ち分ける
サンドバック練習とマススパーリングが最も違うのは、相手が自分の意志で自由に動くことです。そのため相手との間合い(距離)も随時変化します。
だからボクシングの実践では、距離に応じてストレート系かフック系かパンチを打ち分けなくてはいけません。
長い間合いでフック系のパンチを撃っても当たらないですし、短い間合いでストレート系のパンチを撃っても肘が伸び切らないので威力が半減します。
間合いに応じて最適なパンチを打ち分け、さらに自分な得意なパンチを打てるよう相手との距離を確保するのが大切。
なお相手との距離を測る上で有効なパンチがジャブです。まずはジャブを撃ち、間合いを確認して次のパンチで何を撃つか判断しましょう。
2.常にアゴを引く
マススパーリング中に疲れたり、相手との距離が近くなると、アゴが上がってしまう癖のある初心者は多いです。
私自身もそうなのですが、そんなつもりはないのですが無意識にアゴが上がってしまうんですよね。いつもトレーナーから指摘されてから「え!?アゴ上がってたの?」と気付くことは多いです。
アゴは急所の一つなので、絶対パンチを貰ってはいけない箇所。相手と向き合う際には、必ずアゴを引く必要があります。
ちなみに僕がアゴを上げないために、意識するポイントは常におデコを相手の顔へ向けること。おでこと相手の顔が見えない糸で繋がっているイメージです。
マススパー中にそのイメージを持ち続けていれば、アゴが上がることは絶対にありませんよ。
3.足を止めずリング全体を使う
撃たせずに撃つのがボクシングの試合を有利に進めるために大切。だから足を止めて、相手の的になるような行為は初心者は絶対にやってはいけません。
ステップワークを駆使して、リングを広く使って相手に的を絞らせないようにしましょう。
ステップワークの基本である左右と前後のステップは次の動画が参考になります。まずは動画で解説されている左右と前後のステップを完璧にできるようにマスターするのを最初の目標にしてください。
※基本ステップワークの解説は21秒付近から
なおボクシングで1ラウンドを動き続けるには脚の体力がかなり必要なため、練習をしっかりしていないとバテて棒立ちのサンドバッグ状態に成りかねません。シャドーボクシングの時から、しっかりと足を動かすようにしてください。
また初心者の場合、最初にいたコーナーポスト付近から全く動かずスパーリングをしてしまうケースが多いので、1ラウンドの3分中にすべてのコーナーを回るぐらいの意識を持って練習した方がいいです。
【まとめ】おじさんから始めてもボクシングは上手くなれる
今回の記事では40代からボクシングを始めたおじさんボクサーの私が、上達のため注意したポイントをまとめてお伝えしました。
ボクシングを始めたばかりの方なら、同じような箇所でつまずく可能性が高いので参考になれば幸いです。
また新たにアドバイスを受けた重要だと感じた内容やポイントは、随時追加していきますので、ボクシングを上達したい初心者さんはお気に入りやブックマーク登録しておくと役立つはずです。
あとよかったらあなたが気を付けていることもコメント欄で教えてください。一緒にボクシングを楽しんでがんばっていきましょう!